東南アジアの化石燃料投資評価で日本が「最悪の」資金提供国に
2025年6月27日 – Viktor Tachev/Energy Tracker Asia
この記事の要旨
東南アジア地域における化石燃料資金提供の実態について、35の主要銀行を包括的に評価した最新レポートが発表された。
報告書では、日本の銀行が、海外からの投融資全体の30%を占める最も多くの資金支援を行なっていること、中でも、国際協力銀行(JBIC)は、調査対象の金融機関の中で「最悪の」資金提供者であることが指摘されている。
日本による東南アジア地域の化石燃料プロジェクトへの巨額の資金支援は1.5℃目標に整合しないばかりか、東南アジアの化石燃料依存を後押ししている。
東南アジア地域における化石燃料投資評価報告書
東南アジアの複数の団体による報告書「2025年東南アジアの化石燃料ダイベストメント(投資撤退)スコアカード」が、評価対象の銀行のうち、日本の金融機関が最も多くの資金を化石燃料プロジェクトに投資していることを発表した。
報告書では、東南アジアが現在も化石燃料への投資者にとってのホットスポットとなっていることが指摘され、化石燃料プロジェクトに直接または間接的に資金提供を行う国内外の金融機関が特定された。
評価対象となったすべての銀行が、(化石燃料への融資を行う反面)地球温暖化を1.5℃未満に抑えるというパリ協定の目標に整合するための取り組みへの準拠、または貢献を表明していた。しかし、もちろん化石燃料への資金提供は温暖化促進に寄与し、環境に甚大な影響を及ぼす。そればかりでなく、東南アジア諸国の地域経済に財政負担を強い、電力コストを高騰させ、エネルギー安全保障を悪化させている。
日本の金融機関による資金提供が全体の30%超
報告書によると、2016年から2024年までの間に、化石燃料プロジェクトには総額452億米ドルが投じられ、そのうち71.9%が石炭関連プロジェクトに充てられていた。化石燃料への資金のうち65%超は、海外の銀行から提供されたものだった。
石炭プロジェクトへの資金提供総額は324.8億米ドルにのぼり、そのすべてが2016年以降に最大級の発電用石炭設備を導入した3カ国(フィリピン、インドネシア、ベトナム)に集中している。

天然ガスの下流部門に対するプロジェクト資金提供は、総額126.9億米ドルに達し、その約半分は、パリ協定以降に最も多くのガス発電容量を導入したタイへのものだった。残りは、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、ベトナムに配分されている。
2018年から2022年にかけては、東南アジアの銀行がガスプロジェクトの主要な資金提供者だったが、2023年と2024年には、海外の銀行が最大の資金提供者として浮上した。

少なくとも13カ国の海外銀行が東南アジアにおける石炭および天然ガスの拡張を支援している。報告書によると、その中でも日本の金融機関が最も多くの資金を提供しており、実に全体の30%超を占めた。これに、米国のシティグループ、欧州のING、UBS、スタンダードチャータードが続く。
「最悪の銀行」の評価を受けたJBIC
報告書では、東南アジアにおける石炭および天然ガス火力発電所への継続的な資金提供、この先の資金提供停止方針の欠如などにより、国際協力銀行(以下、JBIC)が「最悪の」海外資金提供者と評価されている。
JBICによる資金提供は巨額であり、他の主要国際銀行や東南アジアの銀行の提供額を大幅に上回るという。これは、国内需要が縮小する中で、国内の石炭LNG関連企業を延命させ、化石燃料技術の推進にまつわる既得権益を維持するという日本の戦略を明確に反映していると考えられている。
例えば、日本が、2021年末までに海外の無対策石炭火力発電への新たな政府支援を停止することに合意したその1カ月後に、JBICはCCS(二酸化炭素回収・貯留)やアンモニア混焼といった技術を用いる海外石炭プロジェクトへの支援を継続する方針を発表している。
CCSやアンモニア混焼といった技術は、日本がAZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)構想等で、「クリーンエネルギー」あるいは「移行的エネルギー」として推進してきた高コストな技術だ。


エネルギー・エコロジー・開発センター(CEED)事務局長、ジェリー・アランセス氏は「日本の銀行、特にJBICは、東南アジアにおける石炭およびガスインフラの継続的な拡張を可能にしており、気候目標と地域社会の双方を危険にさらしている。これら金融機関は、化石燃料への資金提供をやめ、再生可能エネルギーへの公正な移行を支援するという約束を、実際の行動で示すべき時である」と述べる。
日本の化石燃料重視の対外政策は、すでに市場の専門家、環境団体、さらには他のG7諸国からも批判の対象となっている。現在、G7諸国のうち日本を除くすべての国が、石炭火力の全廃を完了、もしくは国内での廃止期限を発表している。
東南アジアの化石燃料依存を後押しする日本
報告書は、対象の銀行が表向きに行なっている温暖化対策にまつわる表明と、その裏で行なっている化石燃料への継続的投資との間には埋め難い乖離があると指摘する。
例えば、三井住友銀行(SMBC)、みずほ、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)といった金融機関は石炭の段階的廃止を公言していながら、最近になって国連主導のネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)から脱退した。これらの金融機関が、CCSなどの技術が組み込まれていれば化石燃料プロジェクトへの資金提供を継続するとしている点も問題だ。
地球規模での気候行動において重大な責任を負っていることを踏まえ、銀行はダイベストメント方針をより厳格なものとし、新設および既存の石炭火力発電所への一切の資金提供を停止する必要がある。これには、グローバル・コール・エグジット・リスト(石炭関連事業に関わる企業を独調査団体が包括的にまとめたデータベース)に掲載されているすべての企業が含まれる。
新規の化石燃料火力発電所プロジェクトへの資金提供は、それらプロジェクトが1.5°C目標に整合した国の脱炭素化移行に橋渡し役として必要不可欠であることを証明する必要があり、厳格な制限下で、環境および社会的な保護措置に従ってのみ行われるべきである。
また、報告書の著者らは、これまで東南アジアの石炭依存を後押しし、現在ではガス拡張やアンモニア混焼、CCSといった誤った解決策を推進している海外の金融機関に対しても、即時に投資を引き揚げるよう求めている。さらに、銀行に対しては、資金と投資を再配分し、ASEAN諸国の気候変動対策、気候災害による損失と損害への対応、公正な移行、および気候に強靭な社会構築の支援を呼びかけている。
この記事はEnergy Tracker Asia掲載のViktor Tachevによる記事 “Fossil Fuel Divestment Scorecard: Japan “Dirtiest” Financier”(公開日2025年6月25日)を翻訳、編集の上公開しています。