石炭への固執が日本の首をしめる
2023年6月19日 – ヴィクトール・タチェフ / Energy Tracker Asia
最終更新日:2024年10月4日
日本の石炭問題は扱いづらい話題だ。日本の関係者はこれまでこの問題を避けてきたが、現在、国として緊急に対策を講じる必要性に迫られている。
日本は世界的に見ても、最も炭素集約度の高い経済圏となっている。一方で、2050年までにネットゼロを目指すことを公約に掲げてもいる。2050年までのネットゼロを実現させるには、化石燃料からの脱却と再生可能エネルギーへの移行を加速させるしか道はない。しかし、日本はなかなか軌道修正できないでいる。
日本の気候変動に関する公約と発表された対策
日本は2050年までのネットゼロとともに、2030年までに46%の排出量削減を達成することを公約に掲げる。その頃までには、非化石燃料の電源がエネルギーミックスの60%近くを占めるようになると予測されている。再生可能エネルギーの割合の予測は、36~38%だ。
日本はグリーン成長戦略の政策枠組みのもと、2050年までに洋上風力を中心とした再生可能エネルギーが総発電量の50~60%を占めることを目指している。
石炭火力発電所に関する政策の見直し
また、エネルギー転換やよりクリーンな電源への移行については、石炭火力発電所に関する既存の政策を抜本的に見直し、第二世代の太陽光発電(PV)やカーボンリサイクル技術の研究開発を推進し始めることを約束している。
2021年に英国で開催されたG7サミットで、日本は気候変動の緊急事態に対処するため、2021年から2025年の間に年間600億米ドルを拠出することを公約に掲げた。
COP26では、今後5年間で海外向けの気候変動融資を100億米ドル増額すると約束することで、アジアの途上国の脱炭素化への取り組みに資金援助することを提案。また、2021年末までに国際石炭融資を終了することを誓約する。
舞台裏で何が起こっているのか – 日本の石炭火力発電所
世界的な石炭融資の廃止を公約に掲げたものの、日本は石炭発電プロジェクトに資金を提供し続けてきた。
Global Energy Monitorは、日本の政府機関がインドネシアとバングラデシュの石炭火力発電所プロジェクトに対して継続的に資金援助を行っていることを明らかにした。
バングラデシュのマタバリ発電所プロジェクトは、日本国際協力機構(JICA)がいかに海外の石炭発電所新設に積極的に取り組んでいるかを示す代表的な例だ。
多くの建設業者や商社が撤退し、バングラデシュ政府から疑問の声が上がった後も、JICAはこのプロジェクトを継続的に支援している。しかし、それ以上に問題なのは、国内の石炭火力発電所では禁止されている、不必要に汚染度の高い技術が使用されているということだ。
世界的に見ても、日本は依然として化石燃料への融資国として上位に位置する。また、アジアにおけるガスインフラの拡充の原動力ともなっている。
Fossil Free Japanによると、政府は化石燃料のために年間100億米ドル以上の公費を投じているとされる。
脱石炭リスト(GCEL)によると、石炭産業の最大の融資者リストで、日本の銀行が上位3位を占めていることが明らかになった。同時に、日本の年金積立金管理運用独立行政法人は、石炭に対する投資機関として第5位となる。
日本における石炭の段階的廃止
また、日本は石炭火力からクリーンな電力への移行に関する声明の署名を拒否し、国家規模での石炭への固執を示している。現時点で、日本はG7の中で唯一、2050年までの石炭の段階的廃止に合意していない国となった。
Beyond Coalによると、現在164基の石炭火力発電所が稼働しており、8基が建設中または計画段階にある。これらの石炭火力発電所が新設されれば、二酸化炭素の排出を増加させ、二酸化炭素回収の取り組みを妨げることになる。
日本の石炭問題の影響
日本が石炭や化石燃料に固執することで、さまざまな問題が生じている。
その一つは、国に対する世論の信頼が損なわれることだ。気候変動への影響を強く意識しているにもかかわらず、日本政府は石炭火力発電技術に固執している。その結果、日本の気候変動対策は世界に比べて大きく遅れをとることになった。
日本の石炭輸入
日本のエネルギー依存の問題はさらに深刻化している。現在では、石炭需要のほぼ100%を、主にインドネシアとオーストラリアからの輸入で賄う。他の化石燃料に関しても同様だ。日本は、エネルギー需要の96%を輸入に頼る。
石炭火力発電所を延命させ、再生可能エネルギーを犠牲にして、天然ガスや水素由来のアンモニアや石炭混焼など、他の高炭素排出エネルギーに軸足を移すことは、国としての目標達成を遠ざけることになる。さらに、G20の中で最大の化石燃料支持国としての立場をより強固なものにしてしまう。世界の1.5°C目標を達成するためには、国として2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止する必要があるのにもかかわらず。
石炭化石燃料からの脱却に必要なのは
日本は島国であり、気候変動の影響を最も受けている国の一つだ。だからこそ、日本政府は地球の気温上昇に重大な懸念を抱くべきなのだ。化石燃料の融資に何十億ドルも注ぎ込むことで、気候変動の影響を悪化させるようなことは本来あってはならない。転換策を提唱し、国内外で再生可能エネルギーの採用拡大を促進することで日本は国際的なリードを取ることができる。これらの行動は、国にとっても、国際社会にとっても有益なはずだ。
※この記事は、2022年5月2日にEnergy Tracker Asiaに掲載され、Energy Tracker Japanが日本語に翻訳したものです。(元記事はこちら)