【LNGに依存する日本】G7としての責任

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【LNGに依存する日本】G7としての責任

2023年6月5日 – エリック・クーンズ / Energy Tracker Asia

最終更新日:2024年10月30日

日本は天然ガスの90%以上を輸入に頼る。そのため、世界のLNG市場や情勢によって供給やエネルギーコストが左右されてしまう。ロシアの天然ガスに依存していることから、2022年には国際的にこの責任に焦点があてられた。強固な再生可能エネルギーグリッドを開発することが、現実的・長期的な唯一の解決策だ。

日本は世界第7位の天然ガス消費国で、資源に乏しいため、国内の需要を満たすために輸入に頼っている。現状をみると、世界のLNG輸入量の22%が日本に流れており、最大の天然ガス輸入国となってしまっている。天然ガスを筆頭とする化石燃料への依存度の高さが、日本が一国として世界第5位のCO2を排出し、世界全体の年間排出量の2.5%以上を占める主な理由だ。

出典:憂慮する科学者同盟

ガス使用量は1980年代から一貫して増え続け、2011年に急増している。福島の原発事故後、54基の原子炉が閉鎖され、その直後から30%のエネルギーギャップが生じ、それを化石燃料で埋め合わせたのだ。2021年現在、国内の総エネルギーの5分の1、電力の3分の1以上が天然ガスでまかなわれている。

日本はG7加盟国として、化石燃料依存からの脱却、必要な低炭素エネルギー能力の開発との両立を図る必要がある。ほとんどのG7諸国が、2035年までの電力セクターの脱炭素化を公約に掲げる一方、日本では最優先事項として天然ガスへの新たな投資支援が検討される。2つの政策は相容れ図、天然ガスへのさらなる投資はエネルギー転換を遅らせる。

今年、日本で開催されるG7において、天然ガスが大きな論点になることは間違いないだろう。

日本はどのように天然ガスを調達しているのか

天然ガスは、日本の総エネルギー消費量の21%を占め、90%以上が輸入でまかなわれる。天然ガスの輸入量は、福島原発事故後の急増を経て2014年にピークを迎え、その後は微減にとどまっている。

日本の天然ガス純輸入量(2000〜2020年)出典:IEA
出典:IEA

2022年時点で、日本の天然ガス輸入量は7,199万トンで、前年比3.1%減となった。しかし、政策の転換は減少の要因の一つに過ぎない。主な要因はエネルギー価格の上昇だ。日本の天然ガス輸入の総支出は、2021年から2022年にかけて97.5%増加している。

国内生産

国内生産量は消費量のわずか2.2%と極めて少ない。原因としては、天然ガス田が非常に少ないこともあるが、利用可能な多くのガス田が未開発のままであることが挙げられる。

国としては、エネルギー自給率向上の一環として、国産ガス生産を推進している。これには、28億立方メートルの天然ガスを供給できる国内最大級のガス田の開発への資金援助が含まれる。稼働すれば、日本の天然ガス総需要の1.2%を供給することができる規模だ。

しかしながら、これらのプロジェクトをもってしても、天然ガスの輸入が日本のエネルギーグリッドの中心であることは変わらない。 

日本のLNG輸入に関する統計

オーストラリアは日本に最も多くのLNGを輸出する国であり、ここ10年で着実にシェアを伸ばしている。2022年、オーストラリアは日本に天然ガス総需要の43%を供給するが、2021年から15%増加した計算だ。総額は190億米ドルを超え、オーストラリアのLNG輸出全体の37.9%を占める。このような依存関係は、生産量や需要の減少に脆弱な両国にとっては課題となる。

残りのLNG輸入量の大半をカタール、マレーシア、米国、ロシアが占める。

日本の液化天然ガス基地とインフラ

261,167kmのパイプラインからなるガスネットワークに接続する輸入ガスを受け入れるために、日本には37基のLNG受入基地のネットワークが整備されている。しかし、ガスネットワークについては、地域の電力会社やガス会社がほとんどのパイプラインを所有しているため、比較的断片的な状態となっている。諸外国のような単一の送電システム事業者は存在しない。

日本のLNGインフラ。出典:IEA
日本のLNGインフラ 出典:IEA

現在の国全体のLNG貯蔵容量は1800万立方メートルで、36日分の供給が可能だ。

なぜ日本はガス料金が高いのか

国内の天然ガス生産量が非常に少なく、ガスを輸入するための直接のパイプラインも存在しないことから、これまでガス料金が安かったことは一度としてない。一方で、供給や地政学的事象など多くの要因に左右される世界のLNG市場に大きく依存する。

ガス輸入価格は過去最高水準に達し、消費者が支払う電気料金を押し上げるなど、一部の人がエネルギー危機と捉えるような状況が進行しており、大きな懸念材料となっている。

需要に追いついていない供給

最近のガス料金高騰の主な原因は、需要と供給の関係にある。

まず、ロシア・ウクライナ戦争により、世界的に天然ガスの入手が難しくなっている。ロシアは世界第2位の天然ガス生産国だが、2022年には生産量が約12%減少した。これにより、2022年にはLNG価格が過去最高水準まで上昇している。 

また、日本は、2022年の夏にガスを購入し、冬季の需要増に備えた。これにより、世界のLNG供給がさらに制限され、価格のさらなる高騰を招くこととなった。一方、アジア全域でLNGの需要は着実に増加している。また、中国の経済活動が回復し、新型コロナウイルス関連の規制が緩和されれば、アジアの需要は供給をさらに上回るだろう。2023年中の中国の需要の伸びを35%とする試算もある。

出典:Wood Mackenzie

日本のエネルギー自給率

日本は国内の化石燃料資源が限られているため、昔からエネルギー問題で苦労を強いられてきた。その結果、エネルギーの輸入依存度が高く、市場価格の影響を受けやすくなっており、これが同盟国にとっても問題となる可能性がある。このことは、ロシアによるウクライナ侵攻でG7諸国がロシアからのLNG輸入を激減させたことで浮き彫りになった。日本はその後のエネルギーギャップを埋めることができず、諸外国に追随することができなかった

しかし、再生可能エネルギーが化石燃料と同等のコスト競争力を持つようになった今、状況は一変する可能性がある。日本は、島国として世界第3位の洋上風力および地熱エネルギーのポテンシャルを持つ。これらの再生可能エネルギー資源を開発するために政府が支援を行うことで、エネルギー自給率向上と、レジリエントな再生可能エネルギーグリッドを構築することにつながるはずだ。

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