不確実性を煽るのはやめよう:なぜアジアはLNGトラップを避けるべきか

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不確実性を煽るのはやめよう:なぜアジアはLNGトラップを避けるべきか

2023年5月29日 – Energy Tracker Japan

最終更新日:2024年7月23日

ガスインフラ投資のリスクはかつてないほど高まっている

このレポートでは、世界の電力セクターのガスインフラへの投資に伴う長期的なリスクを探ります。このレポートは、欧米のガス発電所の見通しに焦点を当てた2021年のレポート『再考を要するガス投資』の続編で、アジアに焦点を当て、変動の激しい液化天然ガス(LNG)市場からの影響を受けやすくなっている当該地域の国々に関わる極端なリスクについてまとめています。

BAUとNZE2050のグローバルガス経済

ロシアとウクライナの紛争は、ガス供給がいつでも兵器化されたり、国際的な制裁に直面したりする可能性があることを示しており、各国は今、この非常に不安定な市場へのエクスポージャーを減らす方法を緊急に優先させるべきです。

このレポートでは、政策立案者に対し、クリーンエネルギー分野でもたらされる膨大な機会を把握し、低コスト・低リスクの再生可能エネルギーを中心とした電力システムを計画することにより、エネルギー自給への道を歩み始めるよう説得を試みます。

主な調査結果

  • 変動が激しい世界のLNG市場へのエクスポージャーを増やすことは賢明なことではない。ロシア・ウクライナ紛争は、ガス供給がいつでも兵器化されたり、国際的な制裁に直面したりする可能性があることを示しており、各国がエネルギーセクターのニーズのために不安定なガス市場への依存を高める時期ではないことを、これまで以上に明確に示している。蓄電池を備えた再生可能エネルギーを中心とした電力システムを計画するなら、商品価格のリスクを最小限に抑え、ガス発電施設を新設するより低コストで開発でき、数十億ドル規模のLNGインフラ投資が座礁するのを防ぐことができる。
  • 日本、韓国、ベトナムで新たに建設される大規模なガス発電施設は、2050年までにネットゼロエミッションを達成するという道筋とは全く相容れないものであり、建設されたとしても計画寿命よりかなり早い時期に閉鎖を余儀なくされることも考えられる。こうした厳しさを増すシナリオの下で、計画された新たなガス発電施設の開発が進められた場合、損失は最大で700億ドルに達する可能性がある。大多数のプロジェクトは、実現するために政府の大規模な支援を必要とするが、より安価な再生可能エネルギーが代替として利用できる場合、こうした支援は意味をなさない。
  • 日本、韓国、ベトナムにおける再生可能エネルギーの機会はきわめて大きく、ガスよりもコスト競争力がある。日本、韓国、ベトナムで新たに開発される太陽光発電や陸上風力発電は、全体的な投資額が新設のガス発電施設よりもすでに安価になっているか、2025年までに安価になると見込まれる。新設のガス発電施設の計画・建設期間が通常4年以上であることを考えると、開発を進める施設はいずれも、より低コストの再生可能エネルギーとの競争が激化する中で、初日から稼動時間の抑制に直面する可能性がある。
  • 蓄電池を備えた新しい太陽光発電施設は、2030年代初頭には、日本と韓国の既存ガスプラント施設に対してコスト競争力を持つようになると予想される。つまり、これらの国は、10年以内にガス発電施設に匹敵する柔軟性の高いサービスを、より低コストで社会に提供できる低炭素エネルギー源を持つようになり、政策立案者は、2050年のネットゼロエミッション目標に沿って、電力セクターのガス使用の段階的廃止を計画できるようになる。LNG価格が上昇した場合、この変曲点はさらに早く訪れる可能性がある。
  • アジアにおける洋上風力発電には、非常に高い潜在的成長力がある。広大な海岸線と領海は、今回分析した3カ国がいずれも洋上風力開発の世界的リーダーになるのに非常に有利な位置にあることを意味する。韓国とベトナムの洋上風力発電施設は、この10年で新設のガス発電施設に匹敵するコスト競争力を持つようになると予想される。

※この記事は、2022年4月8日にCarbon Trackerのウェブサイトに掲載され、Energy Tracker Japanが許可を得て日本語に翻訳したものです。(元記事はこちら


Carbon Trackerについて
Carbon Tracker Initiativeは金融を専門とする非営利シンクタンクで、気候変動の実情に合わせて資本市場の動きを調整することにより、気候安全保障に資する世界エネルギー市場の実現を目指しています。カーボンバブル燃やせない炭素、および座礁資産に関するこれまでの研究は、金融システムを低炭素の未来に向けたエネルギー転換に合わせる方策についての新たな議論の起点となりました。 http://www.carbontracker.org

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